阿岐本は話しはじめた。
 駒吉神社が多嘉原会長らテキヤとの付き合いを止めたところから始まり、原磯が町内会の実権を握ろうとしており、なおかつ、駒吉神社や西量寺に近づこうとしていること。そして、その背後には宗教法人ブローカーがいることを伝えた。
「……その宗教法人ブローカーってのが、高森浩太というやつでして、そいつは西の直参だそうです」
 仙川係長の眼が輝く。
「西の直参……。そいつは大物だな……」
「はい。花丈組二代目組長でもあります」
「それで……?」
「人が住む場所には、なくてはならないものがあります。水道・電気・ガスといったインフラに始まり、スーパーなんかの商業施設、病院、学校……。そして、神社や寺もそうだと、私は思います」
「神社や寺が……?」
「体が病めば病院に行きます。そして、心が病まないように神社や寺が必要なんじゃねえかと……」
「どうかね……」
「とにかく、よこしまな理由で地域から神社や寺を奪っちゃいけねえ。そう思うんです」
 

 

今野敏さん小説連載「任侠梵鐘」一覧