昼の十二時頃、事務所に到着した。
 若い衆が、食事の用意をしていた。阿岐本が言った。
「おう、俺もメシをもらおうか」
 健一がこたえた。
「粗末な食事ですよ」
「米と味噌汁があれば上等だよ。奥の部屋に運んでくれ」
「はい」
 日村も食事をすることにした。ご飯に味噌汁、そして焼き魚だ。阿岐本が言ったとおり、これで充分だと、日村は思った。
 食事をしながら、日村はテツに訊ねた。
「何かわかったか?」
 テツも食事を続けながらこたえる。
「二代目花丈組ですが、ほとんど実態がないようです」
「実態がない?」
「事務所を別名義で借りていたという容疑で、組長の高森が逮捕されたことがありました。それ以来、事務所も持てずにいます。ネットで拾えるニュースはそれくらいです」
「西の直参なのに話題はなしか……」
「釣りが好きらしいです」
「釣り? 高森がか?」
「原磯といっしょに東京湾でボートをチャーターして釣りをしている写真がSNSにアップされていました」
「極道が釣りの写真をSNSにアップか……」
 そういう世の中なのかと、日村は思った。