「ああ。昨日、多嘉原会長のお宅にうかがって、話をさせていただいたんだが……」
「えっ。本当に会いに行ったのか? それもご自宅に……」
「いちいち驚くなよ。高森の話になって、会長がご存じかどうかうかがったんだ」
「それで……?」
「会長は高森の名前をご存じなかった」
「そうなんだ……」
「妙だと思わねえか? 西の直参で若頭補佐だ。その名前を、多嘉原会長ほどの方がご存じないというのは……」
「そういうこともあるだろう。会長だって日本中の極道の名前を覚えているわけじゃねえさ」
「そうかね……」
「アニキだって、高森のことは知らなかったんだろう?」
「多嘉原会長と俺とじゃ格が違うよ」
「いやあ、アニキだって俺から見れば充分に大物だよ」
 オヤジに「大物だ」と言えるオジキも大物だと、日村は思った。
「ちょっとひっかかるんだ。そこんとこも含めて、もうちょっと高森のことを調べてみてくれ」
「わかった」
 永神が帰ると、日村が阿岐本に尋ねた。
「こっちも兵隊をそろえますか?」
「そんなもん、どうやってそろえるんだ?」
「健一たちは今でも後輩を集められると思います」
「ばか言ってんじゃねえよ。健一の後輩ってことは堅気だろう」
「素っ堅気とは言えないやつもいると思います」
「極道の喧嘩に、そんな連中を巻き込んでどうするつもりだ。そんな喧嘩じゃ勝っても負けても稼業の笑い者だ」
「すいません」
「いいから、そういうことは俺に任せておけ」
 心配なことは山ほどあるが、とにかく阿岐本の言うとおりにしようと思った。
「わかりました」
 

 

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