還暦を迎えて思うこと
「店を始めたことを後悔していないか」と聞かれることがある。
後悔はしていない。
プロレスラーを引退してはいないけれど、しばらく試合をする気になれない中で、やることなかったからね。
あのままリングに上がり続けていたら、ものすごい大ケガをしていた可能性もあるし、体を酷使し続けていたら今以上に体はボロボロになっていたと思う。
1980年代のはじめ、俺と一緒に全日本プロレスの合宿所にいたメンバーは次々と亡くなった。
冬木弘道さんは2003年にがんで亡くなり、三沢光晴さんは2009年に試合中の事故で他界した。2022年にはターザン後藤さんも病気で亡くなったから、もう越中詩郎さんと俺しか残っていない。
こんなラーメン屋であっても、いい時期にプロレスの第一線から退いて、店を始めてよかったとは思う。
越中さんのように田舎暮らしを満喫しているほうが、長生きできるのかなと考えたこともあるよ。
でも、店を始めたから生きていられるのだと感じている。
ただ今は、楽しみがない。
営業が終わった夜中や店の定休日に翌日用の仕込みをして、家に帰ったら少し晩酌をして寝る。それ以外、まったく楽しみがないと言っていい。
開店から14年経って、つぎ込める資産はもう何もなくなった。
高級な食材は使えなくなったけれど、うまく店を回せるようになった……というか、回さないといけないからね。
なるべくコストを抑えて、「みんなに楽しんでもらえるもの」を作るように心がけている。