20世紀の子育て

20世紀の子育ては、「躾けて、いい子にすること」だった。

親や社会が、(子どもにしてみれば)勝手にルールを決めて、ルールを順守できなければ頭ごなしに叱られる。

『孫のトリセツ』(著:黒川伊保子/扶桑社)

私たちはそうやって育ったし、子どもたちの世代も多くはそうやって育った。

頭ごなしのコミュニケーションで育てると、脳の中では「上が言うことを疑わず、言われたことを死に物狂いで遂行する回路」が活性化する。

組織の中で、精巧な歯車として機能する人材には必要不可欠な資質で、たとえば軍隊では、全員がこういう脳じゃなきゃ作戦が遂行できないし、皆の命も危ない。

20世紀の社会では、大量の歯車人間が必要とされていた。

今や機械がやっていることの多くを人間がやっていたから。

歯車人間、つまり「上に言われたことを疑わず、迅速に正確にやってのける人材」のこと。

こういう脳の持ち主は、塾に通って行う受験勉強が得意だし、大企業では確実に重宝されて出世していった。

「躾けて、いい子にする」子育ては、20世紀には、社会の需要とぴったり一致していたのである。

「いい子」は、おおむね幸せに生きられたので、その子育て法が否定されることもなかった。