出家前して何が変わったのか
貴人のトップは天皇ですが、天皇が皇位を降りると上皇になり、出家すると法皇になります。
では法皇は修行僧のような厳しい毎日を送っていたのか? というとさにあらず。
既に申しましたように、何をしても良い。出家前と同じように豪奢な生活を送っていた。
貴族も同様です。出家しても何が変わる、ということはない。欲望を捨てて清らかな生活を送り、仏道修行に明け暮れれば「あの人はえらいな」と評価されるでしょうが、それはマストではないのですね。
ただ、問題はその中世的常識がどこまで古代に持って行けるか、なのですが・・・。
僕はだいたい、大丈夫だと思っています。
仏と貴人の関係は、平安時代も鎌倉時代もそれほど変わらない。古代の貴人も出家したからといって、貧しく、厳しく、求道的な生活をした、とは考えにくい。花山天皇も含めて、きっと出家前と同じような、豊かな暮らしぶりだったに違いありません。
『「失敗」の日本史』(著:本郷和人/中公新書ラクレ)
出版業界で続く「日本史」ブーム。書籍も数多く刊行され、今や書店の一角を占めるまでに。そのブームのきっかけの一つが、東京大学史料編纂所・本郷和人先生が手掛けた著書の数々なのは間違いない。今回その本郷先生が「日本史×失敗」をテーマにした新刊を刊行! 元寇の原因は完全に鎌倉幕府側にあった? 生涯のライバル謙信、信玄共に跡取り問題でしくじったのはなぜ? 光秀重用は信長の失敗だったと言える? あの時、氏康が秀吉に頭を下げられていたならば? 日本史を彩る英雄たちの「失敗」を検証しつつ、そこからの学び、もしくは「もし成功していたら」という“if"を展開。失敗の中にこそ、豊かな"学び"はある!