ツアー仲間との出会い

機内の照明が暗くなり、少しは眠ったほうがいいとは思うのだが、不安で眠れない。機内後方の小さな窓から朝日が差し込んできた頃、私は思い切って添乗員さんの席に行ってみることにした。向こうが来てくれるのを待ってはいられない。

その席は、驚くほど離れた前方にあった。後で知ったのだが、ツアーのお仲間たちはその周りにまとまっていたらしいのである。

広いアムステルダム空港での乗り継ぎの際は、待っていてくれるようにしっかりお願いした。彼女は「大丈夫ですよ」と言ってはくれたものの、(あら、この人のこと、うっかり忘れていたわ)という表情を読み取ってしまったのは、私のひがみだろうか。

機内でこれだけ離れていれば、最後尾に近い私が降りていく頃には、ツアーの方々ははるか先へ進んでしまっているだろう。ともかく、思い切って主張してよかった。

アムステルダム空港では、何とか添乗員さんを見失わないようについていく。周りを見ると、みんな旅慣れているようだ。

ここで、私は〈神様がお遣わしになった〉とでも言いたくなるような女性の2人連れと出会った。ひとり参加なのだと告げると、言い終わらないうちに、「仲間になりましょ。私たち今から3人連れよ!」と笑顔を向けてくれたのだ。

トイレへ行くにも、気軽に荷物を見ておいてと言える。搭乗口はここで正しいのか確かめ合える安心感。連れがいるって、こんなにも気持ちが楽になるものか。

8日間のイタリア旅行は文句のつけようもないほど素晴らしいものとなった。私が1人参加であると知ると、ご夫婦の方も2、3人連れの方も皆、心から気を使ってくれ、食事の時も、自由行動の時も、寂しくなかった。

その後、ひとり旅はしていない。でも、初めての時を思い出すと、イタリアの美しい世界遺産もさることながら、心細さでいっぱいの私を受け入れてくれたお仲間の優しさが蘇り、気持ちが温かくなる。

ひとり旅だからこそ味わえた人の温かさだった。そして自分の中にあった意外な行動力にも、我ながら拍手を送りたくなるのだ。