ある日、夫が「次の宿を最後にしよう。早起きして、そのまま千葉に行くよ」。夜、宿に着いてすぐ休み、翌朝起きたら、夫が「いい天気だ。来てごらん、テイコ」と、カーテンをバーッと開けた。
そうしたら目の前に、大きな大きな富士山が……。もう、びっくり! 夫は私が驚く姿が見たくて、その部屋を選んでくれたんですね。それも彼のやさしさです。
千葉に着いたら、「現実」が待っていました。それまでぬか漬けなんてしたことないのに、毎日、混ぜさせられるし(笑)。やがて長男、長女が誕生。子どもが小さいうちは、音楽から遠ざかっていました。
ギタリストの夫は、千葉のクラブやホテルなどを回って仕事をしていました。でもやっぱりボーカルが必要だから、また歌わないか、と。姑に相談したら、「子どもたちは見ているから、おやんなさい」。普通、「子どもが小さいのに夜の仕事なんて、とんでもない」と言いそうなものですよね。でも、許してくれた。本当にありがたかったです。
子どもたちが小学生になると、敷地内のアパートに住んでいた千葉大学の女子学生が、夜、子どもたちを見てくれました。まわりのみんなに支えてもらって、歌を続けることができたのです。