そんな生活が15年くらい続いたある日、買い物先で喫茶店に入ってコーヒーを飲んでいたら、BGMでジャズがかかったんです。フルバンドで、本当に素敵なスウィング・ナンバー。
聞いているうちに自然に体が動いて、「あぁ。また歌わなきゃ」と天啓を受けたような気持ちになって。それからは夢中でしたね。歌える場を見つけては、歌うようになりました。
そうこうしているうちに、思いがけず、レコーディングをしないか、という話をいただいたんです。それが2年前。石垣島に「すけあくろ」という日本最南端のジャズ・バーがあって、世界中からいろいろなジャズ・ミュージシャンが訪れます。そこのオーナーでコントラバス奏者でもある方が、動いてくださったんです。
そしてなんと、世界的なジャズ・ピアニストのデビッド・マシューズさんがピアノを弾いてくれることに。録音は「すけあくろ」で、いつものライブみたいな雰囲気だったので、緊張しませんでした。
デビッドさんは当時80歳、私は86歳。このアルバムが、雑誌『ジャズ批評』の「ジャズオーディオディスク大賞2022」特別賞を受賞。また、琉球放送のラジオ番組『ダニー・ボーイ~齋藤悌子、ジャズと生きる~』が、ギャラクシー賞ラジオ部門大賞に選ばれました。
さらに『徹子の部屋』からも声がかかって。徹子さんとお話しできるなんて思いもしませんから、夢のような時間でしたねえ。