微妙なお年頃

だが、連載を始めた頃は「自信を喪失している時期」で「結構投げやりな気分で生きてたかも。」と後になって小泉今日子は振り返っている(「エピローグ」170)。確かに、その内容も「パンダのan・an」とは違って元気がない。

「30代は微妙で中途半端なお年頃」というタイトルが付けられた冒頭のエッセイは、「私…。最近…。なんだか…。微妙な年頃。思春期なんかとっくの昔にやり過ごした。30も半ばのこの私に再び微妙なお年頃がやってくるとは夢にも思っていなかった。」(『小泉今日子の半径100m』2)からスタートする。

(写真提供:Photo AC)

第1回も「最近、悩みがあるのよね。悩みっていうか迷っている。どうしようかなぁ? どうするべきか…。それが問題だ!」(10)から始まり、2回目に至っては「風邪ひいたぁ。40度くらいの熱が3日も4日も続いたぁ。」「病院に行く気力もない感じ。」(14)と精神的にも肉体的にもどん底状態にある自分を露呈する。

永瀬正敏との蜜月期間だった「パンダのan・an」の時期とは異なり、離婚を挟んだ3年間の身辺雑記であることも関係しているのか、「ファッションとかカルチャーとかそういうものに興味を失いかけていたような気がしてたし、このままオバちゃんになっちゃえばいいや!って開き直って宣言したいような心境だったからね。」(63)と後になって、連載開始当時の心境を語っている。

確かに30代後半というのは、微妙なお年頃だ。若さの勢いで突っ走れる時期はとうに過ぎたけれども、まだ本格的な「老い」を感じるほど年は重ねていない。

女性の場合は、とりわけ子どもを産むかどうかという選択を最終的に迫られる時期でもある。今までとは違う方向にシフトすべきなのか、今後何を軸に生きていくべきなのか。

3年間書きためたエッセイと写真からは「どん底」の状態からもがきつつ浮上し、悩みながら、答えを探しながら生きていく小泉今日子の姿が見て取れる。

幸せってなんだろうね? 別に不幸だと思ったこともないけど幸せっていう自覚? 実感?っていうのもあんまりないかもしれない。過去を振り返ると心が温かくなるような瞬間を思い出したりするけどね。幸せの瞬間を積み重ねていけば、未来の私が幸せと感じるんだろうか?(81)