期待に応えつつ新しい「好き」を探して
「カラオケ番組の人」というイメージで世に出たので、デビュー直後は自分でもどういう歌手になっていくのかまったくわかっていませんでした。不安もありましたが、ワクワクが大きかったと思います。
結局、僕の方向性を定めてくれたのは、コンサートに足を運んでくださるお客さま。人前でいろいろな歌を披露するうち、みなさんが僕に何を期待してくれているのかがわかるようになってきたのです。
そうやって築いてきた今の自分。大事にしているのは、プロとしてお客さまの需要に応えつつ、好奇心を忘れず挑戦することだと思っています。
プロである以上、歌い続けていかなければなりません。それにはやはりお客さまが一番大切。特に僕のコンサートに来てくださるお客さまの大半は年上の方なので、自分の世界観を押しつけすぎてもいけないかなと思っています。
でも、決して受け身の態度ではダメ。そのことは、セルフプロデュースを頑張っていた時期に痛感しました。
これからも聴き続けたいと思ってもらえるように、新しいことにもどんどん挑戦していきたい。そのために、歌をあらゆる角度から好きになることを意識しています。
作詞や作曲をするときも、やり方を定めていません。自分のことを歌詞にしたりしなかったり、ピアノで作ったり、鼻歌から始めてみたりと、いろいろ試しています。
僕の最終的な目標は、「林部智史」というジャンルを築くこと。僕がレジェンドと思う方々――たとえば小椋佳さんやさだまさしさんは、枠にはまらずご自身のジャンルを築いていらっしゃる。そんなふうに、好きなことを突き詰めた結果、僕らしいジャンルを作ることができれば幸せだなと思います。
2024年2月には、初のNHKホールでのコンサートを予定しています。ぜひみなさんにも会場に足を運んでいただけたら幸いです。