(イラスト:Futaba.)
喜びも悲しみも31文字に込めて――。短歌は1300年近く愛され、親しまれてきた表現方法です。今話題の大河ドラマ『光る君へ』では、いいところで和歌が紹介され、物語に深みを出しています。現代でも人の心を動かす詩歌に興味を持つ方も多いのではないでしょうか。本誌2023年11月号では、短歌作りの基礎から魅力的な一首にするコツまでを俵万智さんが解説。その実践編として、「愛」をテーマにした歌を読者の皆さんにご投稿いただきました。応募作全1527首のなかから、俵さんが優秀作と佳作を発表します

全体評と優秀作はこちら

佳作

ありがとう妻に言えずにそっと出す投稿欄の詩歌に託す

(徳島県・三原茂雄)

●評●
直接は言えない言葉も、詩歌に託せば形にできる。今回は佳作に入選したので、ぜひこの誌面を「妻」に、感謝の手紙として見せてほしい。そして、たまには直接言ってみては、いかがでしょうか。

 

 

面会の我に蜜柑をくれる伯母小枝の様な腕を伸ばして

(愛知県・新谷恵美)

●評●
元気づけようと面会に行ったにもかかわらず、逆に気をつかってくれる伯母。蜜柑をくれるというなんとも懐かしい行為とあいまって、伯母さんの人柄が伝わってくる。小枝という比喩が痛々しくも可憐だ。

 

 

ワレモノを包んで捨てたスポーツ紙知らない人の熱愛発覚

(東京都・柿音のの)

●評●
たまたま包んだ新聞の紙面に躍る「熱愛発覚」の文字。ワレモノの不吉さとマイナスイメージの発覚という語が響きあう。とはいえ、しょせん他人ごと。割れた何かと同様、今後関わることはない。