嫁いびり忘れる介護姑のもはや可愛い口にひと匙

(山口県・匿名希望)

●評●
自分をさんざんいびった姑の介護をしている。たとえ相手が忘れても、受けた仕打ちはなかなか忘れられないもの。けれど、それを乗り越えたのだ。「もはや」にこもる達観が素晴らしい。

 

 

バッテリー減るのが遅い1日はいつもあなたと過ごした1日

(大阪府・福田孔明)

●評●
スマホのバッテリーだろう。SNSや動画をついつい見てしまうこともなく、なぜか減らない日がある。そうか、それはあなたと過ごす日だ。バッテリーに語らせて、二人の時間の充実が、伝わってくる。

 

 

愛想よくジャムとボトルの蓋緩め又今度ねと息子は帰る

(新潟県・薬師寺保子)

●評●
なんて可愛くて頼りになる息子さんだろう。ニコニコと力のいる仕事をして、さっと帰ってゆく。上の句の「ジャムとボトルの蓋」という具体性が効いている。場面が目に浮かぶというのは大事なことだ。