デビュー歌集『サラダ記念日』以来、第一線で活躍を続けてきた歌人の俵万智さん。短歌作りの基本的なルールと、より豊かな表現にするアイデアを伝授します(構成=篠藤ゆり 撮影=大河内禎 イラスト=竹田明日香)
【実践編】もっと伝わる歌にするコツ
俵さんの代表的な歌をお手本に、魅力的な一首を作る技を解説します
《「出来事」+「思い」の構造で》
レシピ通りの恋愛なんてつまらない
ぐつぐつ煮えるエビのアヒージョ
ぐつぐつ煮えるエビのアヒージョ
「出来事」+「思い」は短歌の基本構造です。順序は「思い」+「出来事」でもOK。もちろん出来事だけで写実する方法もあるし、思いだけの歌もありますが、それで伝えるにはやや技術を要します。
また、出来事の描写があると、思いだけをぶつけるより読者も共感できるはず。
上の句「レシピ通りの恋愛……」は恋愛に対する思い。下の句の「ぐつぐつ煮える……」の情景描写が、スパイシーで煮えたぎるような心を伝えています。
また、出来事の描写があると、思いだけをぶつけるより読者も共感できるはず。
上の句「レシピ通りの恋愛……」は恋愛に対する思い。下の句の「ぐつぐつ煮える……」の情景描写が、スパイシーで煮えたぎるような心を伝えています。
《主観的な形容詞を避ける》
最後とは知らぬ最後が過ぎてゆく
その連続と思う子育て
その連続と思う子育て
子どもの成長は早いのでいつが最後だったかわからないことも多く、その悔しさや寂しさを詠んだものです。「嬉しい」「寂しい」「悔しい」など、「しい」がつく形容詞は要注意。「嬉しい」と言われても、何がどう嬉しいか読者には伝わりません。
主観的な形容詞を使わずに、いかにその感情を伝えるかが短歌の面白さ。そこに楽しさを見出したいものです。
主観的な形容詞を使わずに、いかにその感情を伝えるかが短歌の面白さ。そこに楽しさを見出したいものです。