漫画を描いている時が一番楽しかった、と
夫が亡くなったのは73歳の時。結婚当初からあまり体調はよくなかった。糖尿病を患っていたし、胃腸も弱く、晩年はがんも患い、最終的には間質性肺炎で亡くなりました。でも、好きなこと、やりたいことを貫いた人生だったと思います。
晩年、「何をしている時が一番楽しかった?」と聞いたら、「漫画を描いている時」と。本当に幸せな人生だったと思います。
2013年度から、広島市の教育委員会が平和教育の副教材として、『はだしのゲン』の一部を使ってくださっていたんです。ところが昨年、それが削除されました。教育委員会からはなんの連絡もなかったので、『中国新聞』の記者から「どう思いますか?」と聞かれて、初めて知ったんです。
数年前にも、島根県松江市や大阪府泉佐野市の教育委員会で、「描写が過激」だとして学校に『はだしのゲン』の閲覧制限を要請したり蔵書を回収する動きがありましたが、どちらも市民からの批判を受けて取りやめたようです。
広島市教育委員会の件は残念ですが、多くのマスコミがそのことを取り上げてくださったので、また読んでみようという方が増えたみたいですね。
そういえば先日、ある方から、「家に『はだしのゲン』を全巻置いておいたら、7歳の子どもがいつの間にか手に取って読んでいた」と聞きました。夫は、「誰かから読みなさいと言われるのではなく、子どもたちが自分から読んでくれるのが一番うれしい」と言っていました。だから、心から喜んでいることでしょう。
来年、広島は被爆から80年を迎えます。ゲンが読者の皆さんの心の中で生き続けて、平和の大事さを世界に広めていってくれたら、夫も本望だと思います。