「オリンピック出場」という目標を達成できた安堵

6月から7月まで開催されたネーションズリーグで3位になり、初めて銅メダルを獲得したときも、8月のアジア選手権で3大会ぶりに優勝してアジアナンバーワンになったときも嬉しかったけれど、心の中では「まだまだ、オリンピック予選がある」 と全員が思い続けてきた。

そして、そこで勝つための準備もしてきた。
ところが、万全の状態で臨(のぞ)むために日々過ごしてきたにもかかわらず、僕はアジア選手権を終えてから腰痛を発症してしまった。

9月30日、パリオリンピック予選が始まる。
大会直前から、大会が始まってからも、ベストコンディションには程遠い状態だった。

けっして焦(あせ)る気持ちがあったわけではない。
でも、初戦はフィンランドに2対0とリードしながら追い上げられ、辛(から)くもフルセット勝ち。

翌日のエジプト戦も2対0から追い上げられ、フルセットで逆転負けを喫した。
3戦目のチュニジア戦でようやく3対0、そこからはトルコ、セルビアという難敵相手にもストレート勝ちを収めることができた。

それでも油断はしなかった。
最後の最後まで何が起こるかわからない。
1点や1セットが重要になるのがオリンピック予選だ。

つねに極限まで緊張感を高め続けてきたこともあり、スロベニアにストレートで勝った瞬間、僕の中に溢(あふ)れたのは爆発的な喜びではなく、目標を達成できたという安堵(あんど)だった。

感情が込み上げたのは、西田有志(にしだゆうじ)選手の涙を見たときだった。
コートの中でいつも熱くプレーして、誰が獲った1点でも全力で喜ぶ。
そんな西田選手の涙を見たら、思わず僕ももらい泣きしてしまった。

振り返れば高校時代や大学時代も、日本一になったときや負けてしまったあと、いつも誰かの涙にもらい泣きしている。