オリンピックに出たい、メダルを獲れる選手になりたい

オリンピックの出場権を獲得したら泣くだろうなとは思っていたけれど、やはりここでももらい泣きしてしまった。

キャプテンとして、最初にコートインタビューへ呼ばれた。
オリンピック出場権を手に入れた、今の気持ちを聞かせて下さい、と言われ、僕はありのままの思いを言葉にした。

「目標を達成したので、すごく嬉しいです。最高のメンバーで、自分たちの強さを証明することができました」
話しているうちに胸が熱くなって、また、涙が込み上げた。

さわやかな笑顔で話す石川祐希選手(写真提供:徳間書店)

僕はいつだってバレーボールが大好きで、バレーボールをしているだけで楽しいけれど、目標を成し遂げることができたこの喜びは、何物にも代えられないぐらい最高のものだった。

振り返れば、僕が日本代表選手に初めて選ばれ、プレーしたのは2014年。
当時はまだ中央大学の1年生で、日の丸やオリンピックの重みなど、まるでわかっていなかった。

自分よりも年上の先輩たちに囲まれて、何をすればいいのか、この大会がどれぐらい価値があるものなのかもきちんと理解しないまま、ただ全力で自分のいいパフォーマンスを発揮するために必死だった。

1つずつ、目の前の試合を戦うなかで、アジア大会、ワールドカップ、世界選手権など、いろいろな経験を重ねてきた。

2016年にはリオデジャネイロオリンピック出場に向けて予選に出場したけれど、 勝つことはできず、8月にブラジルで開催された大会を現地で見て、僕は初めてオリンピックのすごさを知った。
そして、そのとき初めてこう思った。

「オリンピックに出たい。出て、ここでメダルを獲れるような選手になりたい」5年後、1年の延期を挟んで2021年に東京オリンピックが開催された。