昔の友人が駆けつけてくれて
大変だったのは、その後でしたね。私が那須の家へ戻ったのは、ようやく水が引いた9月に入ってからでした。ドアや壁は流木に突き破られ、室内は泥だらけ。平屋でしたので、新調したばかりの家具も全滅でした。浸水して使い物にならない、というレベルではなく、すっかり流されてしまって何もない状態。
家から200メートルくらい離れた川沿いに立つ大木に、自分が寝ていたベッドのマットレスが引っかかっているのを発見した時は、「あの日、家で寝ていたら……」と、さすがに血の気が引きました。
正直なところ、せっかく建てた家が暮らし始めて1ヵ月でオジャンになったうえに、まだ保険に入っていなかったのも痛かった。
すべての衣装はもちろん、愛車のベンツもバッグも靴もお気に入りの食器もすべて失いました。でも、物はまた働いて買えばいいや、と思えたんです。
悲しかったのは、すでに亡くなっていた両親と写った写真が流されてしまったことです。アルバムも失ったと気づいた時は愕然としましたね。すべてを失うというのはこういうことか、と。