「普通鉄道」と「軽便鉄道」

日本の地形図はかつて国鉄と私鉄の2分類であったと述べたが、実はこの記号で分類されたのは「昭和30年図式」からだ(厳密には「大正6年図式」の同14年改訂から国鉄・私鉄の分類に変化しているが、実施状況は限定的)。

昭和30年といえば保守合同で自民党が誕生した年だが、私が物心ついた頃にはそのような記号体系となっていたため、どうも昔から続いてきたような錯覚がある。

それ以前は「国鉄と私鉄」のような経営主体ではなく、普通鉄道と軽便鉄道という区分であった。

これはまさに前述のヨーロッパと同様の発想であるが、軽便鉄道の記号は、具体的にはハタザオの白黒が均等ではなく、白い部分が長い。

軽便鉄道は一般的に軌間が狭く小型の車両を用いた鉄道として知られているが、もともと狭軌が主である日本の一般的な鉄道よりさらに狭く、具体的には762ミリなどであった。

厳密に言えば軽便鉄道法による軽便鉄道は一般的な国鉄の軌間1067ミリも含んでいるが、地形図で軽便鉄道の記号を適用するのはこの軌間より狭いものに限っている。

法的に「軽便鉄道」の扱いが消えて私鉄の扱いが地方鉄道法に拠る「地方鉄道」に統一された後も、地形図では一般的な鉄道より軌間の狭い鉄道を「特殊軌道」の記号で表現することになったので、必ずしも法的な用語と一致してはいない。