鉄道と軌道の境目

その「特殊軌道」の記号だが、もとは馬車鉄道のために用意されたものである。鉄道と軌道という分類は一般には馴染みが薄いが、現在でも法的には分けられている。

明治5年に開業したのは鉄道で、もともと蒸気機関車が牽引する列車が走るものである。

<『地図記号のひみつ』より>

これに対して「軌道」は路上にレールを敷いて馬が客車を牽く馬車鉄道だった。後にその上に架線を張って路面電車に変身するのだが、記号はそのまま流用された。

大正に入ると、軌道条例(後の軌道法)による電車の線路が増えたのに合わせてスピードも輸送力も向上する。利便性は大いに高まり、補助的交通のはずだった電車も新設軌道(専用軌道)を高速で走るようになった。

特に大都市圏では、従来は蒸気機関車を走らせていた路線もこれに対抗して電化、電車を走らせるようになる。

こうして鉄道と軌道の境目は徐々に不明瞭となり、地形図の記号としても鉄道と軌道の区分が意味をなさなくなってしまった。

戦後になって高度成長期を迎える時代に登場した「昭和30年図式」が国鉄・私鉄という区分に変更された背景には、そのような鉄道・軌道の発達史がある。