「いまは、フォークを歌って聞いて、過去を懐かしむ気持ちが明日を生きる薬になるはず、と思いながら歌っています」(撮影:洞澤佐智子)
コンサート中心の活動に加え、「音楽も自然みたいなもの」と自然豊かな地で暮らすのが南こうせつさんのスタイルだ。ライフワークでもある野外イベント「サマーピクニック」がまもなく最後を迎える。いまの思いを聞いた(構成:丸山あかね 撮影:洞澤佐智子)

前編よりつづく

先立った仲間の分まで

こうしてお話ししているいまは、デビュー55周年記念コンサートの真っただ中です。

僕はわりと順風満帆に歌手生活を歩んできたと思われがちなんですが、たとえばかぐや姫を解散してソロ活動を開始したらレコードの売り上げは落ちるわ、コンサートのお客さんは減るわで、僕なりに落ち込んだこともありました。

ただ不思議なものでね、しばらくすると持ち直す。そして再び低迷期がやってくる。流行と時代背景は密接な関係にありますから、求められる音や音楽のありようが変化するのは当然のこと。誰だって、浮き沈みの激しい世界で不安の波を幾度も乗り越えながらいまがあるのです。

人って苦しいと迷走するんですよねえ。僕にしても20代、30代のころは「神田川」を封印したり、フォークにテレビ出演は似合わない、と頑なに拒んだりしたこともありました。