NHK大河ドラマシリーズや映画などで「日本史ブーム」がまだまだ続いています。しかし、歴史研究家の河合敦先生いわく「じつは教科書が改訂されるごとに、多くの歴史用語や人物が消滅したり、評価が逆転したりしている」そうで――。そこで今回は、河合先生が日本史の新説をまとめた著書『逆転した日本史~聖徳太子、坂本竜馬、鎖国が教科書から消える~』から「平清盛」についてご紹介します。
戦前は悪人とされた平清盛は、いまの教科書で変化したのか?
足利尊氏と並んで、戦前に悪人の代名詞となったのが平清盛であろう。
たとえば1943年の国定教科書『初等科国史 上』(文部省)を見ると、「思いあがつた清盛は、勢の盛んなのにまかせて、しだいにわがままをふるまふやうになり、一族のものもまた、これにならひました」と書いてある。
ほとんど主観しか描写されていないひどい文章だ。だが、こうしたイメージは戦後も引き継がれてきた。
そんな清盛も、ついに2012年にNHKの大河ドラマ『平清盛』で主人公となった。
松山ケンイチさんが主演をつとめ、極めてリアリティのある意欲的な映像だと感じた。制作側の番組にかける熱意が見てとれた。
ところが初回放送を見た兵庫県知事が「華やかさに欠いていて、薄汚れた感じだった。もっと鮮やかにしてもらいたい」と発言をしたこともあり、視聴率は結果的に大苦戦となった。