韓国語
(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第31回は「韓国の雑誌に寄稿デビューした」です。

国際詐欺か? 仕事か?

6月上旬、私の公式ホームページに仕事の依頼があったと、管理者から連絡があった。転送されたメールを読むと、依頼者は韓国の『PRISM OF(プリズムオブ)』という媒体の編集長。やや辿々しさのある日本語でメールは、かなりの長文で書かれていた。

『PRISM OF』は韓国国内で人気のある映画批評雑誌だ。毎回ひとつの作品を160ページのボリュームで掘り下げている。映画評論家、記者、教授、監督など作品に関わる人物の名前が連なっている。たまに出かける洋書コーナーで見かけたことがあり、イラスト装丁のセンスに惹かれて購入したことがあった。

『PRISM OF(プリズムオブ)』の夏号
装丁の色違いが用意された『PRISM OF(プリズムオブ)』の夏号

今回は昨年、カンヌ国際映画賞で受賞歴もある『怪物』について取り上げると、書かれている。私には映画出演者の安藤サクラ、永山瑛太、田中裕子らが、これまで日本でどんな活躍をしてきたのかを執筆してほしいという内容だった。

以前、私はオタク好きが高じて『ベスト・オブ・平成ドラマ!』(青春出版社刊)を上梓した。編集長はこのプロモーションで多くの媒体に取り上げられた記事を読んで、オファーをくれたらしい。これまでに大学教授のコメントはあったものの、日本人の書き手による“執筆”は私が初の試みとか。

「そんなどメジャー媒体が、なぜ私に? いやこれ詐欺かな」

「この媒体はしっかりしていらっしゃいますよ。まずは小林さん、連絡をしてみてはいかがでしょうか」

最近、ホームページに仕事以外のややこしいメールが届くようになったので、管理者にはあらかじめ仕事内容の精査をしてもらっている。管理者は私以外の人間の仕事内容にも多く携わっているので、そのへんの知識は充分にある。そんな人が薦めてくれるのなら……と、とりあえずメールの返信を送った。

「お問合せありがとうございます。貴誌のお名前は海外雑誌を取り扱う書店で見たことがありましたので、お声がけいただいて光栄です。さて、執筆に関していくつか質問をさせてください」

今回は小林久乃が、初の国外の媒体へ寄稿したという、非常に誉れ高いお話し。ただそこには日本人同士のやり取りでは感じることのない、稀有な体験があった。