イラスト:コーチはじめ
無理を言ってくる相手に対し、あなたはイヤと言えますか? もしも言えないならば、心に鬱憤がたまっているかもしれません。気持ちを相手に伝え、自分らしく生きるためのトレーニングを、心療内科医に教わります。後編は、具体的なメソッドについて伺いました(構成=歌代幸子 イラスト=コーチはじめ)

〈前編はこちら〉

本当はどうしたいのか自分の心に問いかける

日々の診療で多くの患者さんと向き合っていると、実際、相手の反応が怖くて、自分の気持ちを抑え込んでしまう人がとても多いように感じます。

頼まれると嫌と言えない人、何でもいつでも引き受けてくれる人、いつも物わかりのいい人は、相手から「都合のいい人」と思われがちです。職場などでも、頼みやすい人に業務が押しつけられ、我慢して引き受けているうちにうつ状態に陥ってしまう例はよくあります。

けれど、自分の気持ちをきちんと冷静に伝えることを続けていくと、相手もあなたを気遣って、尊重してくれるようになっていくのです。例えば「ここまではできるけれど、これ以上は無理です」とちゃんと伝えることで、自分の立ち位置をしっかり守る。そうした行動によって自己肯定感も育っていきます。

私は昭和女子大学で社会人向けのアサーティブ講座を開設し、ワークショップ形式で教えてきました。受講生に例題を出して考えてもらうようにすると、自分なりのアイデアでこんなふうに伝えてみたらどうかと工夫します。それを楽しみながら学ぶことで、修了する頃にはみなさん、生きる姿勢も変わっていきました。

アサーティブに生きるということは、自分らしく生きることです。それは周りから良く思われるための自分ではなく、自分自身が本当はどうしたいのかを、心に問いかけることから始まります。さらに言えば、「自分らしく」生きることは、自分だけが心地よく生きるということではありません。

自分の考えや思いをきちんと表現すると同時に、相手や周りの人の考えや生き方を受け入れること。アサーティブとはそのスタートであり、生きる姿勢につながっていくものなのです。