<藤式部と呼ぶ>と宣言した「宮の宣旨」、実は…

そうした中に「宣旨の君」あるいは「宮宣旨」という女房がいます。

ドラマ内では値踏みするような視線でまひろを迎い入れ、これからは藤式部と呼ぶと宣言した、あの「宮の宣侍」ですね。小林きな子さんがその役を演じていらっしゃいます。

ちなみに『紫式部日記』では、「小柄でほっそりしており、きれいな髪が一尺ほどの着物の裾から伸びている。気品のある人というのはこういう人のことを言うのだろう」と絶賛されています。

彼女は中宮の言葉を貴族たちに伝えるスポークス・パーソンを務めており、のちには彰子の産んだ後朱雀天皇の乳母になったとも言われます。

その本名を源陟子といい、実は醍醐天皇皇子の兼明親王の孫にあたります。

兼明親王は、一度臣下に降りて左大臣源兼明になったのに、また皇族に戻されたという、体よく左遷された大臣。その兼明の嫡子が権中納言源伊陟といい、宣旨の君はその娘にあたるので、醍醐源氏ということになります。

つまり天皇の子で政界有力者だった人物の孫が、彰子の女房務めをするようになっているのです。確かにエリートなのですが、まさに醍醐源氏の衰退を象徴しているような人物なのですね。