「お墓に入りたいっていうのは、田鶴子さんからのプロポーズだったんじゃないですか」「要するにあの世まで一緒にいたいっていうことなのかな(笑)」撮影:本社写真部
2019年8月に妻に先立たれたばかりのアントニオ猪木さん。あまりプライベートについては語らない猪木さんが、ジャーナリストの中村竜太郎さんに心中を明かします。後編は妻・田鶴子さんとの結婚から…(構成=中村竜太郎 撮影=本社写真部)

〈前編はこちら

自分の命を縮めて、私の時間を延ばしてくれた

中村 田鶴子さんとはなぜ結婚なさったんですか。

猪木 ご存じのように私は波瀾万丈な人生を送ってきましたから、結婚も彼女が4回目になります。交際の経緯は先ほどお話ししたとおりですが、私はもう結婚なんてしない、戸籍にこだわらなくてもいいじゃないか、そういう感じで生活していました。事実婚のままで、いまさら結婚しなくてもという気持ちもありました。

ところが事情がありまして。彼女は両親が他界して、お兄さんも亡くなって、お姉さんは嫁いでいる。本人が実家のお墓には入りません、どうしても猪木家のお墓に入りたいという。役所の手続きだとか、私にとっては面倒なことばかりでしたけど、結局2年前に婚姻届を出すことにしました。

中村 お墓に入りたいっていうのは、田鶴子さんからのプロポーズだったんじゃないですか。

猪木 要するにあの世まで一緒にいたいっていうことなのかな。(笑)

中村 結婚指輪は猪木さんがお買いになったんですか。

猪木 いやいや、彼女が自分で買っていましたよ。で、毎年私の誕生パーティをやるんですけど、ホテルオークラで行ったその年のパーティが、いきなり結婚式になったんです。まあ、うまく乗っけられたのかな。

中村 サプライズだったんですね。

猪木 そう。私なんかサプライズばかりの人生です(笑)。で、そのときも有名なカメラマンが来ていて、なんの説明もないまま白いジャケットを着せられて、とにかく写真撮るからって急き立てられ、彼女と一緒に結婚写真を撮影しました。

中村 田鶴子さんはウェディングドレスですか。

猪木 それに近い白いドレスを、ベールをつけて自分でいろいろアレンジして着ていましたね。

中村 それはお喜びになったんじゃないですか。

猪木 本人はすごく喜んでいました。その結婚パーティと最後の2ヵ月が、私ができた最大のこと。その点だけは奥さん孝行させてもらったかな。私は、あまり愛だとか語るのは苦手なのでね。しかし本当に人の想いってすごい。いままで好き放題やってきた私ですが、この年になって、彼女から人の想いの強さと純粋さを教えられました。