『光る君へ』未登場「夕顔の肝心な場面」について

さて、この「夕顔」と「空蝉」は、光源氏と身分違いの女性の恋というテーマで描かれているため、まひろと藤原道長の恋を重ねるイメージで『光る君へ』にも時々挿入されています。

空蝉の「受領(国司)の妻」という立場は、まさにまひろと同等。

本来高い身分なのにそういう立場になっている夕顔も同様で、昔から彼女らには紫式部の我が身を顧みたイメージが投影されていた、という見方があります。

しかし『光る君へ』は少しその解釈をさらにアレンジしています。その典型が、まひろと道長が、ある荒れた邸でしばしば密会をしていた、という件でしょう。

これは「夕顔」で、下町の周りの生活の声が聞こえる環境ではなく、光源氏が夕顔を連れて、ある荒れた邸に行って一夜を過ごした、という話を下敷きにしていると思われます。

しかし『光る君へ』では、「夕顔」の肝心の場面がまだ出てきていません。『源氏物語』では、ここで物怪が現れ、それで夕顔が急死するという有名な話があるのです。

以下「夕顔」から引用すると

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十時過ぎに少し寝入った源氏は枕の所に美しい女がすわっているのを見た。
「私がどんなにあなたを愛しているかしれないのに、私を愛さないで、こんな平凡な人をつれていらっしって愛撫なさるのはあまりにひどい。恨めしい方」
と言って横にいる女に手をかけて(与謝野晶子訳 青空文庫より)

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それで夕顔は前後不覚になり、そのまま亡くなってしまうのです。