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大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。ドラマの放映をきっかけとして、平安時代にあらためて注目が集まっています。そこで今回「夕顔」について、『謎の平安前期』の著者で日本史学者の榎村寛之さんに解説をしてもらいました。

「夕顔」という女

前回のドラマの中で、第五帖(巻とか章と同じ意味)「若紫」の話題が登場しました。

物語に登場した「若紫」を自らの境遇と重ねる中宮彰子。その先について「光る君の妻になるのがよい」と語るシーンには、グッとくるものがありました。

いよいよまひろの『源氏物語』執筆も佳境に入ってきたようです。

その一方、「モチーフになっているのでは」と感じられつつも、ドラマ内で詳しく語られないお話もあります。その代表的なものとして、今回は「夕顔」について補足をしたいと思います。

「夕顔」は源氏物語の第四帖の通称です。

『源氏物語』の章題は後からつけられたもので、この帖に出てくる歌で「夕顔の花」が詠まれていることに由来しています。また「夕顔」は、この巻に出てきて、すぐに亡くなる光源氏の恋人の通称にもなっています。

そのため、当エッセイでもこの女性を「夕顔」としておきます。