(撮影◎本社・中島正晶)

存在しない言葉「ヘラルボニー」

僕たちには4歳上に、重度の知的障害を伴う自閉症の翔太という兄がいます。生まれたときから一緒なので兄の存在は特別なことではなかったけれど、周囲の目は違う。実際、僕たちも兄を拒絶してしまった時期がありました。ほどなく元の仲に戻ることができましたが、兄がいなかったら自分も差別する側にまわっていたんじゃないか。そう考えるとこわくなりますね。

 

JR釡石線の車体や成田空港第3ターミナルのコンコースを彩る(釡石線は25年まで走行予定)(写真提供◎ヘラルボニー)

その兄が子どものころ、自由帳に書き続けていた言葉が「ヘラルボニー」でした。さんざん調べましたが、存在しない言葉なので意味はなく、兄は単に音の響きか文字の見え方が気に入っていたんじゃないか、と思います。社名にはそんな検索ヒット数0件の言葉を選び、「スタート時は0でも、ここから新たなものをつくる」という思いを込めました。

 

緻密な四角や丸模様を精力的に描く佐々木早苗さんの作品は人気が高く、数多く商品化されている(写真提供◎ヘラルボニー)