黄泉と死体の恐怖・穢れ

『古事記』などの描く黄泉(よみ)あるいは黄泉国(よもつくに)の神話は、来世空間を描写するというよりも、「死者は朽ちる」という点を強調するものだ。

「黄泉(こうせん)」なるものは古代中国人が考えた比較的浅い地下世界のことで黄土が地下水に混じって出てくるような感じだろうか、墳墓の内部のような地中空間である。

日本ではこれを「よみ」と訓じたわけだが、この日本語は「やみ(闇)」と関係があると言われる。

イザナキとイザナミは原初の男女神として国土やさまざまな神々を産んだ。直接産んだのは女神であるイザナミだ。

彼女は最後に産んだ火の神のせいで陰(ほと)を焼かれて死んでしまった。以下、『古事記』に沿って記述していこう。

愛する妻の死に遭遇して、イザナキはたいそう嘆いた。彼は最愛の妻を出雲(いずも)と伯耆(ほうき)の国境にある比婆山(ひばやま)に葬った。