ボッティチェリ作品の世界
ボッティチェリ作『東方三博士の礼拝』は宗教画というより、画家と同時代のイタリア・ルネサンス人たちの集団肖像画である。
ただし後景は宗教画の体を為しており、遡ること1400年以上昔のベツレヘムの厩(うまや)に、博士3人が救世主誕生を寿ぐため訪れたところだ。
そこへ当時の「現代人」たる面々まで集まったという次第。
日本を例に取ろう。今の我々が同じく1400年ほど昔へタイムスリップしたとする。
ちょうど飛鳥時代で、聖徳太子が「和を以(もっ)て貴しとなす」と十七条憲法を制定している歴史的瞬間に、背広やらワンピースやらを着た男女が取り囲んでいたらどうだろう。
ボッティチェリ作品はそんなシュールな世界なのだ。