人と比べても始まらない

人間というのは、どうしても自分を人と比べてしまう生き物です。

会社生活を送ってきた人にとっては、会社のなかだけではなく家庭や隣人、地域社会といったさまざまな周囲の目が気になると思います。

『わたしの100歳地図』(著:和田秀樹/主婦の友社)

とくに男性は、出世や社会的地位が人生のモチベーションだという人も多いでしょうし、モチベーションとまでいわなくとも気にする人は多いと感じています。

現役時代はお金をはじめとする財産の多寡や学歴、地位の高さなどを他人と比較して、その優劣で幸せを感じることが多かったのではないでしょうか。ところが、高齢になればなるほど、そういったものからの幸せは感じられなくなるものです。

定年になれば、肩書や地位は手放さざるをえません。体力面でも現役時代のようにはいきません。収入が減れば自由に使えるお金も少なくなります……。

そのような現実を目のあたりにしてもなお、若いころの自分や他人と比較しても幸せを感じることができるはずはなく、逆に不幸な気持ちのまま老年期を過ごしていくこととなってしまいます。

一方で、教育費や家のローンから解放されて、自由に使えるお金が増えたり、あるいは自由な時間が増えたり、会社など周囲との人間関係から解放されたりで、楽になった、これからは自分の好きなように生きられると思える、つまり定年後が幸せだと思う人も、わたしの知る限り、少なからずいます。

もちろん、どのようなことで幸せを感じるかは人それぞれですが、わたしが確信しているのは、本人が「わたしは幸せだ」と思っていれば、それが本当の幸せであり、どこかの誰それと比較したり世間の目を意識したり、若いころはこうだったなどといったことはいっさい関係なく、いま、自分は幸せかどうかということだけです。