つらい時間は「一人になる」などの工夫で乗り切った

合理的配慮を受けるなかで、僕のなかでもひとつの変化が生まれます。

それは、配慮を相手任せにするのではなく、自分から何が必要かというアクションをもっと積極的に起こすべきではないかと思うようになったことです。

名前を書こうとしても、チックの症状が抑えきれず、ペン先がぶれたり、ときにはペンを投げてしまったりしてしまうため、うまく書くことは難しい(写真:『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』より)

そこで、学校側がしてくれる配慮だけに限らず、「突発的に起こるチックの症状には対策方法はないのか」と考えるようになりました。

たとえば、いくら病気だと理解してもらっていても、病院や試験会場、お葬式など静かな場所や厳粛(げんしゅく)な雰囲気が漂う場所では、突然声を出したり、大きな身振り手振りをしたりするのは、適さない行動でしょう。

いままでは周囲の好意に甘えてきましたが、自分でも対策できる部分は対策しようと考えたのです。

そこで、まず僕が学校側に提案したのが「突発的なチックの症状が出たときは、一人になるのを許してもらう」ことでした。

それまでにも僕は学校などで一人にしてもらう機会がなかったわけではありません。

たとえば、試験を受けている最中に、僕のように声や動作音を出す生徒がいると、集中している周囲のほかの生徒の迷惑になります。

また、音声チックの影響で、自分が考えていることを口に出してしまいがちなため、解いているテストの答えを声に出してしまう可能性もありました。

そこで、テストを受けるときだけは、いつも一人別室で受けさせてもらうことで、対策を取っていました。

その体験を思い出し、試験以外のシーンでも「ほかの人の迷惑になりそうだな」「自分の気持ちが安定しないな」と思ったときは、無理せずに率先して一人の時間を作るようにしようと考えたのです。