(写真提供:Photo AC)
自分の意思に反して身体が動いてしまったり、声が出てしまったりする症状が持続する「トゥレット症」という病気をご存知でしょうか。重度訪問介護を専門とする会社で働く酒井隆成さんは、トゥレット症の当事者として、YouTubeや講演会で積極的に啓発活動に取り組んでいます。今回は、酒井さんのエッセイ『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』から、一部を抜粋してご紹介します。

僕が受けてきた「合理的配慮」について

中学から高校にかけて、学校のなかで「合理的配慮」という概念が浸透し始めたことは、僕にとってはとてもありがたいことでした。

「合理的配慮」とは、障害や病気を持っている人であっても、就業や学業などのシーンで、ほかの人と同じように保障され、社会に平等に参加できるように配慮するという試みです。

2016年4月に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行され、全ての公立学校等では、障害のある子どもたちには、必要に応じてこの合理的配慮を提供することが義務化されました。

また、2021年に障害者差別解消法が改正され、2024年4月からは事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化されるようになりました。今後、ますますこの動きは加速していくことでしょう。

この制度のおかげで、僕自身も、中学・高校時代ぐらいからさまざまな合理的配慮を受けて学校生活を送ってきました。わかりやすいのが、テストや試験を受けるときの環境でしょう。

これは「テスト・アコモデーション」と呼ばれ、何かしらの障害を持った子どもの特性がテスト結果に不利な結果を与えてしまう場合は、特性に合わせた環境の調整が行われるというものです。

たとえば、トゥレット症の当事者のなかには、運動チックなどの影響で字を書くのに、とても時間がかかる人もいます。

頭のなかでは何を書けばいいのかわかっているのに、きれいな字を書くために何度も書いては消して、という行為を繰り返すので、当然時間がかかります。普通の生徒たちと一緒に試験を受けていては、すぐに時間がなくなってしまう。

僕自身も字を書くのにはとてつもない時間がかかるため、中学校や高校での僕の試験時間はほかの学生の1.3倍の時間の長さがもうけられていました。なお、高校受験の際も同様です。