人に迷惑をかけるほうがいやだった
その代表的な例が、一人で集中して何かに向き合う時間です。
大きな試験でなかったとしても、クラスのみんなが問題に集中しているときに、僕が大声を出すと、周囲に悪影響を与えるだけではなく、みんなからの心証も悪くなってしまいます。
でも、僕の側でも、「やってはいけない」と強く考えれば考えるほどに、ますます緊張感が高まって、症状が悪化する可能性もあります。
そんな事態を防ぐために、自習の時間や小テストの時間などは、教室を移動して、別室で取り組むようになりました。
仮に5分程度の小テストであっても、静けさが求められるシーンでは、どんどん場所を移動して一人になるようになったのです。
はた目からは大変そうに見えたかもしれませんが、僕としては、人に迷惑をかけるほうがいやだったので、全く負担にはなりませんでした。
もし、同じようにトゥレット症の人で、僕と同じような緊張を抱えている学生さんがいらっしゃるのならば、ぜひこの「場所を移動して一人になる時間を作る」ことを実践してみてほしいと思います。
※本稿は、『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
『トゥレット症の僕が「世界一幸せ」と胸を張れる理由』(著:酒井隆成/扶桑社)
自分の意思に反して身体が動いてしまったり、声が出てしまったりする症状が持続する「トゥレット症」。
この難病と20年近くにわたって一緒に生きてきた著者はいま、「世界一幸せ」と感じているという。
いかにして病気と向き合い、苦難の連続を乗り越え、天職に出会い、前へ進んできたのか?
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