「父が徐々に弱ってきて、これは私が手伝わなきゃいけないな、水木の娘として今後は生きるんだと、肝が据わったのが40歳頃」(原口さん)

松本 これも清水さんから伺った話ですけど、水木先生と父が一緒に新幹線で京都の映画村に行った際、車内で水木先生から「アンタは今、何をしているんですか」と聞かれた父が、漫画家以外にも宇宙関係や大学教授などいろんな役職の書かれた名刺を見せたらしいんです。そしたら水木先生が、「アンタ、漫画描いておらんですな」と一言。

原口 あ~。(笑)

松本 それにショックを受けたのか、その日は宿泊予定だったのに急用ができたからと東京に帰ってしまったというんです。その話を聞いて母と、「あきれた! そこで怒っちゃうなんてパパはどうしようもないね」って。

水木先生の一言って核心をついているんですよね。ですから、「尚子さんはお父さんのファンなんだって」と言ったら、ものすごく嬉しそうでしたよ。

原口 ホント!? ファンとしてはすっごく嬉しいです。松本先生の漫画を読んで物理学や宇宙に興味を持ち、研究の道に進んだ人はすごく多い。日本の宇宙開発の裾野を広げる大きな存在だったとつくづく思います。

松本 父が聞いたら喜びます。昔はユーチューブなどないですから、漫画やアニメを通して宇宙に触れる子供も多かった。父は「絵空事は描きたくない。動くものをきちんと動くと理屈でわかっている絵を描きたい」と言ってましたので、そのへんで貢献はできたかなと思います。

後編につづく


(c)映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』
鬼太郎の父(左)と人間・水木がともに運命に立ち向かう感動秘話。
以前の公開バージョンに327カットのリテイク、音の再ダビングがなされ、10月4日より全国劇場にて再上映されている
https://www.kitaro-tanjo.com/


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