就職氷河期世代の陰

ところで、図序-1を眺めていると、04年卒と05年卒の間にそれほど差がないことにも気づく。

確かに、05年卒はその直前の学年よりは多少数字が改善しているものの、就職氷河期が終わったといってよいほどの回復ぶりではないように思う。

しかし05年卒以降の学年を就職氷河期世代に含めている文献はほとんどなく、就職氷河期世代向けの政策対象からも外れることが多かった(ただし、現行の「就職氷河期世代支援プログラム」では2000年代に卒業した世代は全て含むよう対象が拡大されている)。

本記事も他の文献との整合性を考えて04年卒までを就職氷河期世代と定義するが、本当は06年卒くらいまで就職氷河期世代に含めるべきなのかもしれない。

その後、07〜09年卒でいったん90年代半ばと同水準まで回復するものの、08年秋のリーマンブラザーズの破綻に始まる世界同時恐慌(リーマンショック)の影響を受けた10年卒以降の数年にわたって再び落ち込む。

就職氷河期世代の陰に隠れて注目されにくいが、そのすぐ下の世代についても注意深く目を配る必要があるだろう。

※本稿は、『就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。


就職氷河期世代-データで読み解く所得・家族形成・格差』(著:近藤絢子/中央公論新社)

バブル崩壊後の不況期に就職活動をせざるを得なかった「就職氷河期世代」。

本書は1993~2004年に高校、大学等を卒業した人々を就職氷河期世代と定義し、雇用形態や所得、格差などを統計データから明らかにする。

データから見える現実、講じ得る支援策とは。