「一度出てみればそこには明るい世界が広がるかも、父のためにもなるんじゃないかと、今回一大決心をしてこの対談に臨んだんです」(松本さん)

原口 私たちが住んでいる調布市では、水木の命日を「ゲゲゲ忌」としてイベントが行われるんですが、水木ゆかりの地を巡るスタンプラリーがあるんです。

その時に小さな子供を連れたお母さんが「これはね、『ゲゲゲの鬼太郎』を描いた人のお墓なんだよ」と教えてて、「へえー」って子供が言ってるんです。その光景を見ているだけで泣きそうになっちゃった、嬉しくて。

松本 私、今まで公の場で顔は出してこなかったんです。でも隠れてばかりもいられない。一度出てみればそこには明るい世界が広がるかも、父のためにもなるんじゃないかと、今回一大決心をしてこの対談に臨んだんです。

原口 私も昔は顔出しはイヤだったんですけど、手塚治虫先生の娘のるみ子さんに、「それは親父が元気だからだよ。亡くなったら、親父の作品を忘れてほしくないから自分が前に出て行かなきゃ、と絶対に思うから」と言われて。彼女の言う通りでしたね。

松本 私も同じようなことを尚子さんから言ってもらいましたよね。「Xデーは必ず来るから、お父さんが生きているうちに聞けることをたくさん聞いて、語り継いで発信していくのが私たちの役目。じゃないと忘れられちゃうよ」って。父がこんなに早く逝くとは思わなかったけど。

原口 もう新しい作品は出ないですから、水木も松本先生も。だから、今まで出た作品を新しい読者に読んでもらいたいし、新しい取り組みもしていきたい。

23年11月から公開された映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』の大ヒットは素直に嬉しい。鬼太郎をまったく違う視点で映画にしていただいたことで若い世代の人たちが観に来て、その方たちが水木の本を読んでくださるというサイクルが生まれて。

この映画は10月4日から真生版として再び上映されています。

松本 本当に素晴らしいですね! うちは27年に『宇宙海賊キャプテンハーロック』と『銀河鉄道999』が連載開始から50年。ファンの方はもちろん、父の作品を知らない方たちにも楽しんでいただけるように受け継いでいきたい。松本が、「一番大事なのはDNAで、自分たちはそれを運ぶ舟なんだ」と言っていましたから。

原口 カッコいい!

松本 宿命というより私たちの使命ですよね。


(c)映画「鬼太郎誕生ゲゲゲの謎」製作委員会

映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎 真生版』
鬼太郎の父(左)と人間・水木がともに運命に立ち向かう感動秘話。
以前の公開バージョンに327カットのリテイク、音の再ダビングがなされ、10月4日より全国劇場にて再上映されている
https://www.kitaro-tanjo.com/


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