赤ちゃんの尚子さんと水木さん。子供時代の思い出は、「週末に家族で新宿のデパートに出かけて家具を見たり、おいしいものを食べたりすること」だったそう(写真提供◎原口さん)

信念を持って続けるすごさ

原口 水木は9年前に93歳で亡くなり、青山葬儀所でお別れの会を開きました。第一部は関係者、第二部はファンの方たちにお見送りしていただきましたが、第二部が始まる時には長蛇の列で。「お父ちゃんはこんなにも多くの人に愛されていたんだな」と涙が溢れました。父のすごさを改めて知りましたね。

松本 うちは2023年2月に85歳で亡くなりましたが、6月に行われたお別れ会の日に台風が直撃し、新幹線が止まったりで大変でした。それでも、午後には晴れて大勢の方が来てくださいました。私はファンの方たちと接する機会がなかったので、それは本当にありがたくて。「お父さんよかったね。見てる?」と父に話しかけましたね。

原口 本当にファンの方たちはありがたいですよ。水木のスケジュール帳にも「読者が大事」と書いてありました。

松本 父が亡くなってから仕事場を整理しているんですが、デビュー前や直後の原稿が山ほど出てきたんです。どれもものすごく丁寧に描かれていて。一つのことを、信念を持って続けていくことのすごさに圧倒されました。本当に父は一生懸命描いていたんだな、と。

原口 よく途中で諦めなかったよね。

松本 本当にそう。そういえば、横浜で水木先生の展覧会に伺った時、ショップで若いお母さんが鬼太郎の塗り絵を子供に買ってあげているのを見たんですけど、子供さんが嬉しそうで。そうやって将来に繋がっていくんだな、いいなあと思って。