歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。
10月号の書は「秋深き隣は何をする人ぞ」です。
10月号の書は「秋深き隣は何をする人ぞ」です。
秋はちょっぴり寂しく人恋しくなる季節
秋深き隣は何をする人ぞ
これは松尾芭蕉が亡くなる2週間ほど前に、旅先の大坂で病臥しているときに詠んだと言われる句です。「旅に病んで夢は枯野をかけ廻る」と並ぶ、芭蕉の人生最終期の句だと言われています。
病に臥せ、寂寥感に包まれているとき、隣家に人の気配を感じ、ぽっと温かい気持ちになったのかもしれません。ちなみに松尾芭蕉の命日「時雨忌」は11月28日(旧暦10月12日)です。
秋が深まると、元気な人間でもちょっぴり寂しくなったりします。そんなとき、人の営みが感じられると、なんとなくほっとするもの。ところが最近は隣家の物音や子どもの声を《騒音》と捉える人も多いようですね。
もちろん騒々しいのは迷惑ですが、人の気配が過剰に気になるのは、寛容の心を失っている証拠。もしかしたら心が病みかけているのかもしれません。