色々な意味でボタンのかけ違いが…

これが光源氏や在原業平なら、即、恋愛となるのですが、薫はちょっと違います。

彼は、親代わりになっている冷泉院のところで、宇治から来た阿闍梨(僧侶)から、世を捨てた八の宮の噂を聞いて、ぜひ語り合いたいとやって来ていたのです。なので、この男女の関係は、最初からどこか掛け違ったものになります。

さらに宇治の別邸で、薫は宮に古くから仕えている老女の女房の昔語りから、自分の父が柏木で、母の女三の宮の不義の子だという確信を持ってしまうのです。

一方、八の宮は、兄の子(世間的には)で同じような人生観の薫を当然気にいるのですが、姫のどちらかと結婚させて、自分は晴れて出家しようと考えたようです。

色々な意味でボタンのかけ違いが起こるのが「宇治十帖」です。

そして最大のボタンのかけ違いは、大君が父の後ろ姿しか見ていなかったこと、つまり父以上の“世捨て人女子”だったことでした。