二人に関わる三人のヒロイン
さて、この二人に関わってくるヒロインに、宇治の大君、中君、浮舟という三人の貴女がいます。
三人の父親は宇治八の宮という光源氏の異母弟ですが、光源氏の生涯には一切関わってきません。
というのも彼は、光源氏が須磨・明石に流謫していた時期に、源氏を目の敵にする弘徽殿女御(朱雀帝の母)ら右大臣家によって、皇太子(のちの冷泉帝。表向きは朱雀の帝の異母弟だが、実は光源氏の子)を廃して新たに立てる代わりの東宮候補だったのです。
そのため、光源氏が帰京して冷泉の帝が即位し、右大臣家が衰退してからは政治的に全く意味をなくして、忘れ去られた宮になっていたのです(多分後づけ設定)。
彼は美しい妻や豪邸を失い、仏道を志すのですが、娘たちを残して出家することもできず、結局宇治の別荘で、いわば世捨て人のような暮らしを送っていたのです。
さて、この二人の娘、中君は可憐で美しく、大君はその上に気品をトッピングしたようで、まさに物語の中の姫君がリアルに現れたような、と薫の目に映ります。