「60ハウス」と「ぴっころハウス」

人生のB面では生き方を見直し、それまでの物にあふれた生活からシンプルに生きるのがいい。家がコンパクトになれば、自ずとその空間にフィットした生活をしようとするだろう。

ここでは、私が考案した「60ハウス(ロクマルハウス)」と「ぴっころハウス」を紹介したい。

〈「60ハウス」〜二人暮らしにちょうどいい平屋〉戦後、アメリカ軍の軍人とその家族向けに建てられた洋風の平屋住宅、通称・米軍ハウスにヒントを得たアメリカンテイストのフラットハウス。

60歳前後のリタイアしたカップルの理想の住まいを想定し「60ハウス(ロクマルハウス)」と名付けた。

年を重ねても楽に暮らせるよう、廊下をなくし、車椅子になっても動ける空間となっている。南側には大きめのテラスを配置し、アウトドア・リビングのような使い方もできる。

「60ハウス」〜二人暮らしにちょうどいい平屋(本書より)

〈「ぴっころハウス」 〜おひとりさま向けのミニマルな二階建て〉「ぴっころハウス」は、拙著『60歳からの家』で発表した、一人暮らしを想定したミニマルな二階建て住宅だ。

建蔽率が60パーセントの住宅地であれば、約45平方メートル(13.6坪)の敷地に理論上は建てることができるため、都心の狭小地にお住まいの方の建て替えにも対応できる。

小さいので建築費も他の二つより安くできる(少し前なら1000万円台前半で建てられたが、2024年現在は1500万円前後が目安だ)。

さらに小さいながらも二階建てなので、1階をお店やサロンとして使ったり、趣味のガレージとし、2階を生活ができるプライベート空間に分けて使うこともできる。

「ぴっころハウス」 〜おひとりさま向けのミニマルな二階建て(本書より)

私は趣味でウクレレを弾く。一般的なものよりひと回り小さい最小サイズのウクレレをピッコロというが、「ぴっころハウス」の名前の由来は、ここからきている。

生涯未婚率は2020年時点で男性で3〜4人に1人(28・25パーセント)、女性で5〜6人に1人(17・85パーセント)の割合だという。

離婚やパートナーとの死別などで40〜50代で一人暮らしになる人もいるだろう。一人の人生を楽しむ一番小さな相棒として「ぴっころハウス」が広まってほしい。

※本稿は『人気建築家と考える50代からの家』(草思社)の一部を再編集したものです。


人気建築家と考える50代からの家』(著:湯山重行/草思社)

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