腸内の異常なタンパク質とパーキンソン病の関係

これらの状況証拠を組み合わせて考えると、このα-シヌクレインに類似したカーリータンパク質が、腸の求心性迷走神経内の正常型α-シヌクレインを異常型α-シヌクレインに変化させ、求心性迷走神経内でレビー小体を形成します。

そして、この異常型α-シヌクレインが脳へと輸送されることで、パーキンソン病を引き起こすのではないか、という仮説が提唱されました(1-3)。

そこで、腸内でカーリータンパク質を産生するある種の腸内マイクロバイオータを餌に混ぜてラットに投与したところ、ラットの脳内で異常型α-シヌクレインの蓄積が増加しました(1-4)。

また、マウスを用いて同様の実験を行ったところ、脳内に異常型α-シヌクレインが蓄積し、マウスの運動機能が低下したのです(1-5)。

こうした実験結果から、腸内の異常型α-シヌクレインが、何らかのしくみによって脳へと輸送され、ニューロンに異常型α-シヌクレインが蓄積することがわかりました。

腸から脳への異常型α-シヌクレインの輸送経路として考えられるのが、血液循環と求心性迷走神経を介した経路です。

そこで、異常型α-シヌクレインを腸に注入する前にマウスの求心性迷走神経を切断しておくと、脳内で異常型α-シヌクレインが蓄積されなくなりました。

つまり、腸内の異常型α-シヌクレインは、求心性迷走神経を介して脳へと輸送されていたのです(1-6)。

最近の研究では、パーキンソン病の患者の腸内マイクロバイオータでは、クロストリジウム属やバクテロイデス属の細菌が少なく、ラクトバチルス属が多いことが報告されています(1-7)。

またパーキンソン病の症状が重くなるほど、アッカーマンシア属の細菌が増加することが報告されています(1-8)。