痩せた直後は、それまで入らなかったサイズの服が着られることを嬉しく思ったりもしたがそれも束の間、見た目より健康が欲しいと切実に願った。だましだまし働いていたものの体がつらく、60歳になったのを機に仕事を辞めることにした。
退職した年の夏、さらなる不運が私を襲う。体調が回復してきたので、ずっと行きたかった旅行に友達と出かけたのだが、そこでまたしてもコロナに感染してしまったのだ。コロナの症状がよくなった後、胃の不調が悪化。つくづく、《60の壁》は高いと実感した。
秋になって涼しくなると、胃の不調もおさまってきた。年に一回受ける胃の定期検診で「異常なし」と言われたときは、一気に肩の力が抜けたものだ。今も薬は手放せないけれど、食欲と体力を取り戻すことができた。
それからは、健康を維持するための生活を徹底。入院食の薄味を思い出しながら減塩メニューに挑戦したり、インスタグラムで見つけた薬膳系のレシピを参考に、胃にやさしい食事を勉強したりしている。
健康だとやる気も漲る。スポーツジム通いを再開し、ずっと憧れていたカフェ巡りや断捨離も始めた。最近は実年齢を告げると、「その年齢には見えない」と言われる。エステ通いを頑張っていたときよりも、無理をしないと開き直ったとたんに若く見られるのは皮肉なもの。
「若い」というのは、「元気で健康的」ということであって、決して「若作り」によって手に入れられるものではなかったのだ。