「タッチ」「うる星やつら」「六三四の剣」……奇跡の年に
1983年、誌上最大部数228万部を記録した『週刊少年サンデー』。当時32歳のあだち充の「タッチ」、当時26歳の高橋留美子の「うる星やつら」。
このラブコメを基本軸として、さらに32歳の村上もとか「六三四の剣」、22歳の島本和彦「炎の転校生」、おなじく22歳の原秀則「さよなら三角」、24歳の細野不二彦「GUーGUガンモ」……。
熱血あり、ギャグあり、青春あり。日本人ならどこかで必ず目にしたことのある作品ばかりである。
本書は、そんな奇跡の年ともいえる83年当時に、どんなことを考えて描いていたかを著者たちにインタビューし、さらに当時の作品のなかから自薦の一話を決めてもらい、その一話ぶんをまるごと掲載している。そうか、ほかならぬ小学館という版元が作った本だから、まるごと掲載が可能だったのか!
〈40歳前後にとって大敵なのは「めんどうくさい」という言葉で。だって、仕事もプライベートも一通りのことは経験できているから、初期衝動のワクワク感はとっくに錆び付いていますからね〉(細野不二彦)
長いキャリアのなかでどう自分をアップデートしていくかというヒントもふんだんに盛り込まれている。
〈少年サンデーを背負ってる感じなんてまったくなかったのは、彼女(高橋留美子)がいてくれたからです。彼女との二人組だとみてもらえたおかげで、荷物を半分ずつにわけられましたからね〉(あだち充)
当時の雰囲気が伝わる証言も随所にある「当時の自分に何かひとこと言ってあげるとすると」と質問されると、ほぼすべての漫画家が、「がんばってるよ」という。
あとは、なにを言っても精一杯やっているから意味がないと。歴史に残る仕事を成し遂げた人々の金言集としても読める。