出世すると高まる自由度

これまで述べた位色は公服に対してのもので、私服であった直衣には同じ形であれど材質や色・紋様も自由だった。そのため直衣のことを「雑袍(ざっぽう)」と称した。

そして、「雑袍聴許(ちょうきょ/雑袍許し・直衣許し)」という直衣でも参内(さんだい)できる特別待遇が、天皇と姻戚関係にある者や関白・大臣クラスの一部の公卿には天皇から与えられた。

位色・素材他の規制がない自由な衣服である直衣での参内こそが特権階級の象徴で、「許し」を得られない階級の貴族達にとっては出世欲を掻き立てるものであったに違いない。

また、何とか天皇家と姻戚関係を結べないかと画策した者も多かったのではないか。ただし、何の規制もないといっても、髷(まげ)の露出は恥ずべきことだったので、冠を必ず被る冠直衣スタイルは守らなければならなかった。