「国益」の認識を徹底する
西村 それで記者は納得した?
佐藤 おっしゃることはよくわかりました、って納得してくれたよ。ただし記者として知った以上は全く書かないわけにはいかないと。結局翌々日に出た記事は三面の社会面で、記事としても扱いが小さかった。秋葉さんに、よくここまで抑えることができたねって言われたな。
西村 なるほど、その「善人のふりをした説得」において「国益」という考えを利用したわけだね。でも、もし私が説得される側で「国益を損なうからやめてくれ」と言われたとしても、すぐに「そうですか」とはならないなあ。
本当に国益を損なうのか、それはどのような「益」なのか、それが国民にどういう影響を与えるのか、まずはその確認を徹底して求めると思うよ。
佐藤 それはそうだよね。
西村 その記者も当然検証はしたとは思うけれど。やはり佐藤さんがいろいろ脅せるネタを持っていたことも暗に効いたということだろうか?
佐藤 そこはよくわからない。
※本稿は、『記者と官僚――特ダネの極意、情報操作の流儀』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『記者と官僚――特ダネの極意、情報操作の流儀』(著:佐藤 優、西村 陽一/中央公論新社)
暴こうとする記者。情報操作を狙う官僚。33年の攻防を経て、互いの手の内を明かした前代未聞の「答え合わせ」。5つの罠と7つの鉄則はすべてのビジネスパーソン必読。