ちょっとしたリフォームのたびに

学生の頃とは違い、あからさまに絶交するなど、嫌悪感をあらわにすることができないのが、ご近所さんとのおつきあいを断つ時の悩み。なぜなら、その後もマンションの管理組合の総会などで、必ず顔を合わせなければならないからだ。

また、少ない戸数のマンションで、あることないことを別の住人に吹き込まれては、自分自身の居場所がなくなってしまう。

だが、それらの点を考慮に入れたうえでなお、私はもう一人の女性とも縁を切った。その人はとにかく、室内のちょっとしたリフォームが大好き。つくりつけの家具を設置するたび、なにかと口実をもうけ、私を家に招くのである。

その時にさりげなく、「ここをリフォームしたのよ〜」とか「これ安かったのよ〜。ウン十万しかしなかったの」と、実際には決して安くない金額を聞かされる。そのたびに私は大げさに驚き、褒めなければならない。

それだけならまだいい。リフォームなんて数年に一度のことだからだ。「お雛さまを飾ったから見に来て」「ブランドものの鞄を買ったんだけど、どうかな?」。なにか新しいものを買うたび、お褒めする役をおおせつかる。

もちろん相手は口に出して「褒めてほしい」とは言わない。だけど流れを考えれば、褒めてくれと言っているに等しい。かくして私はテレビショッピングに出てくるサクラのように、「ホォ〜」とか「ヘ〜」とか「スゴ〜イ」とか、合いの手を入れなければならないのである。