源氏を一目見たい人たちが集まる
今年は、朱雀帝(すざくてい)が即位して初めての祭であり、勅命によって源氏も特別に供奉(ぐぶ)することになりました。
一条大路は、身分の高い貴族から庶民にいたるまで、一目でも源氏を見たいと思う人たちで、びっしりと埋めつくされました。
源氏の正妻である葵の上は、源氏の子を懐妊していました。
気分もよくないときでしたが、女房たちにせがまれて、しかたなく遅れてでかけました。
大路にはすでに牛車(ぎっしゃ)が立て込み、入る場所がありません。
祭の酒の酔いもあって、葵の上の従者たちは、左大臣家の権威をたのんで、あたりの車を退かせます。